ネオ・ユニバース

星の降る夜のことでした(Twitter:@salz_zrm)

漫画「この音とまれ!」のはなし

 

突然ジャニーズと関係のないエントリーを書きますが、この漫画が本当に面白いのでご紹介させてください。

この音とまれ! 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

この音とまれ! 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

ジャンプSQで絶賛連載中、現在8巻まで刊行されています。

あらすじは以下、公式HPより。

先輩達が卒業し、潰れかかっていた時瀬高校・筝曲部。ただ一人の部員となってしまった武蔵だが、そこに不良の愛や箏の天才であるさとわ、実康ら3バカが入部したことで状況は一変。ドタバタしながらも懸命な練習を重ね、学校中を納得させる演奏をするまでに。最初は問題児であった妃呂も加わり、時瀬筝曲部は全国大会を目指し始める!

 

主人公の久遠愛(くどお・ちか*1)は中学時代相当荒れていた男子高校生。そんな彼が何故お箏を弾くようになったのか?突然弱小筝曲部へ入部を申し込んでくるお箏の名門鳳月会の娘、鳳月さとわ(ほうづき・さとわ)の本当の入部の理由とは?荒れていた愛の過去の真相、切っても切れない愛と箏の関係性、そして集まった部員と共に全国大会を目指す――

 

そもそも箏って?

元来は唐より伝来した楽器で、現在の日本では十三本の弦を持つ弦楽器として普及しています。柱(じ)と呼ばれる弦支で音程を調弦(ちょうげん・チューニング)します。また、十七本の弦を持つ十七弦筝というものも存在します。イメージ的には十三弦箏がヴァイオリンなら十七弦箏はコントラバスといったところでしょうか。あくまでイメージです、こんな適当なことを書いたら詳しい人に怒られてしまうかもしれません。十七弦箏は十三弦箏よりもずっと大きく、弦の太さも違います。「琴」の文字を当てることもありますが、正確には「箏(こと・そう)」と表記します。なので愛たちが所属する部は「筝曲部(そうきょくぶ)」と読みます。

 

筝曲には大きく分けると2種類の流派があり、生田流と山田流に分類されます。双方の大きな違いは装着する爪の形です。

 

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画像お借りしました。

画像上部、丸い爪を用いるのが山田流。画像下部の四角い爪を用いるのが生田流です。この爪の形を生かすために、演奏時に箏に向かって正面に座る山田流・斜め45度に座る生田流と座り方にも差が出てきます。作中では愛やさとわ、その他の部員たちが皆四角い爪を用いているので、彼らの所属する時瀬高校筝曲部は生田流だと思われます。

 

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こちらも画像をお借りしました。

画像を見ていただくとわかるように、こちらは四角い爪なので生田流ですね。装着するのは右手の親指・人差し指・中指の3本です。基本的にはこの3本の指で演奏をしますが、爪を着けていない薬指・小指、また左手も使用します。薬指と小指はピチカート*2という弦を指で弾く演奏を、左手は同じくピチカートで弾いたり、調弦した弦を押さえたり、ぐっと引いたり、結構忙しいです。この押さえたり引いたりそれぞれに技法の名前があるのですが、今回は長くなってしまうので割愛します。

 

この音とまれ!の魅力

まず、作者であるアミュー先生が幼少期から筝曲に触れてきたというだけあって、演奏描写がとてもリアルです。なじみのない楽器に恐々と触れる様子、手作りの段ボール箏で練習をする風景などなど。はじめは愛たちのような箏初心者はみんな指の腹が柔らかくて、弦を弾いたり押さえたりするだけで指がパックリ裂けるのではないかと思うあの感覚!わたしは高校時代に筝曲部所属だったのですが、本当に裂けるんじゃないかと思うんですよ…この描写を読んだ瞬間あの痛みが襲ってきて、ウッ…!となりました(笑)

 

そして、作中の曲が実際に公式で聞けることが最大の魅力ではないでしょうか。

なかなか実際に耳にすることの少ない筝曲ですが(お箏と言えばお正月にTVでBGMに流れているぐらい…それ以外に楽曲を聞ける機会がないことは実に残念です)、「この音とまれ!」は作中に登場するオリジナル曲が公式HPおよびYou Tubeで公開されています。アミュー先生のお母さま・お姉さまも筝演奏者だそうです。すごい!

以下にリンクを貼った作中登場曲『龍星群』はお姉さまが作曲され、動画で十七弦箏を真ん中で演奏している女性(さとわ役)が、そのお姉さまだそうです。コミックスでは2・3巻で大きなターニングポイントとなる曲です。

 

www.youtube.com

この曲が!わたしは!とても好きです!!!

是非一度再生してみてください。漫画のワンシーンがところどころにちりばめられているので、この動画だけでも「この音とまれ!」の良さが伝わるのではないかな、と思います。序盤のトレモロアタックは迫力がありますよ!そして愛のソロパート。男性らしい張りつめた強い音、けれど優しい音はまさに愛そのものです。そのほか、筝曲界では有名な八橋検校(やつはしけんぎょう)の『六段の調』や沢井忠夫先生の『石筍』なども作中に登場します。

 

さいごに

わたしは箏に全く詳しくない人間です。なので、詳しい方がこのエントリーを読んだら、何を言っているんだこんな適当なことばかり!と思われるかもしれません。わたしはただ高校3年間、筝曲部に所属していただけの素人です。それでも、箏って素敵だなあと思うのです。邦楽というと、どうにも敷居が高いように感じてしまいますが、もっと身近に普及していってほしいなあと思うのです。そして何より「この音とまれ!」という作品が素晴らしいということを、もっともっと多くの人に知ってほしいなあと、その気持ちだけで書きました。このエントリーが「この音とまれ!」に興味を持つきっかけになれば幸いです。

 

それから

無理やりこじつけるようにジャニーズの話をしますが、ジャニーズだと三味線はよく見かける*3のに筝はタッキーが歌舞伎で披露したくらいでしょうか。確かに大きくて幅をとる楽器ですから、ジャニーズの舞台の中で使用するのは難しいのかもしれません。けれど最近フォロワーさんにお借りした歌舞伎のメイキングで、タッキーがとても苦戦しながら練習している姿が収録されていましたが、あれ、嬉しかったです。ジャニーズがお箏弾いてる…うれしい…またどこかでやってほしいものです…。 

 

 

*1:作中では久遠一家は「くどう」ではなく「くどお」で統一されています。

*2:wiki先生を見たら、最近はより元の言語の発音に近い表記で「ピッツィカート」と表記するんですね…お洒落だ…

*3:やっぱり三味線に関しては村治くんの功績がすごいですよね。Jr.マンションでみんなが思い思いのスタイルで当て振りしているのも好きです。たまにギターみたいな構えの子もいますね、ええ、自担です。